私が、生活介護の支援員に配属されて、7年になります。
生活介護では、重度の知的障害を持つ、利用者さんの支援を行っています。
私が、支援員をしている施設では、知的障害を持つ利用者さんが多く、身体障害、知的障害を持つ統合失調症の利用者さん、ダウン症の方等がいらっしゃいます。
自閉症で伝えることが難しいMさんの特徴
- 言葉を話すことは出来ないが、相手が言っていることは理解できる。
- かまってほしい時は、職員のそばに来て合図をする。
- 奇声にも色々種類がある。
- 不機嫌な時は、首を斜めにかしげて遠くを見る。
- ルーティーンが、決まっている。
奇声の種類とルーティーン
Mさんは、ルーティーンが決まっていて、朝事業所に通所してくると、エプロンを着用して、窓を開けて、閉めます。
その後は、朝は、自分の席に座りバイタルチェックを待っているのです。
支援員が、他の利用者さんの送迎から戻ってくると、必ず、奇声をあげて、バイタルチェックをするようにと訴えます。
昼食後は、皆の食器を必ずMさんが集める行動が見らえます。自分の仕事だと思っているようです。
Mさんの、奇声の種類は豊富で、喜んでいる時、悲しい時、嬉しい時、すべて
「あーーーーー!!」という表現で行っています。
私は、この奇声の種類を理解出来るのに1年かかりました。
気持ちを理解出来ていなかった支援員
今から約7年前になります。私が生活介護職員に配属されたばかりのことでした。
当時は、Mさんが、朝礼、帰りのMTGに参加することを拒み続け、怒って奇声を発していたのを覚えています。
他の利用者さんとのコミュニケーションを図り、少しでも楽しんで貰いたいという思いがありました。
拒むMさんに、何度も、何度も声かけを行いながら、朝礼に参加しよう!帰りのMTGに参加しよう!
しかし、Mさんからすると余計なお世話だったんですね。
その結果ある日、彼の感情が爆発してしまったんです。
支援員2人がかりで、どうにか止めて、落ち着かせることが出来きたのですが・・・
自分の思いが先行してしまい、こうした方が良いからこうしなさい、と相手の気持ちが見えなくなっている状況です。
支援員の大事なポイント
翌日、朝礼が始まる前に、Mさんへ近寄り伝えました。
「Mさん朝礼、帰りのMTGに参加するのが嫌だったんだね。嫌な気持ちにさせてしまってごめんね。」
「だけど、皆と楽しくあいさつ出来たらいいなと思ったんだけどなぁ。じゃぁMさんが参加してもいいよ!っていう時があったら参加してみてね。」
Mさんが涙を流しながら、私の手を握って摩ってきました。
彼は、言葉では伝えることが出来ませんが、大暴れしたことの反省と、自分自身の気持ちを理解してくれたんだ。という感情が伝わってきました。
こういった、動作や行動で心を読み取ることが大切になってきます。
障害者支援にあたって大事なポイント
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自閉症を持つ方の感情を、支援員は理解する必要があります。
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感情を理解することで、共感できるので絆が生まれます。
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利用者さんと、絆を作らなければ支援は成り立ちません。
この絆が大きな一歩で、その日から朝礼のみ参加してくれるようになりました。
何に興味を示すのかが重要
その後、Mさんとの絆を、もっと深めるために色々試してみました。
一緒に楽しむ為に、大きいボールでキャッチボール、卓球、散歩、パズル等色々試しましたが、どれも面倒くさそうだったんですね。
自閉症の方は、自分で思っていることを伝えることが苦手です。
なので、何に興味を示すのかを探すことが重要なポイントになってきます。
試しに、脇腹をくすぐってみたら笑顔で奇声を発しました。
とても喜ばしい奇声です。
同じ奇声、「あーーーーー!!」でもMさんにとっての、感情の入れ方や、表情が違ってきました。
大暴れして約7年後の現在、朝礼は継続して参加してくれますが、帰りのMTGだけはどうしても参加拒否しています。
しかし、給料日の日だけは、参加してくれているんですね。
Mさんの中では、大きな変化と言えるのではないでしょうか。
自閉症の支援にあたって
自閉症だから、こういう支援をしないといけない!という答えはないんですね。
彼は、我々と同じ感情を持ち合わせています。
自閉症だから皆とは違う、というわけではありません。
性格もさまざまですし、好きな物、嫌いな物、こだわりたい物、健常者と一緒なんですね。
ただ特徴を挙げるならば、ルーティーンがあり社交が苦手、人に伝えることが苦手なんですね。
自閉症の子を持つ親や、施設で働く支援員は、その人の性格や特徴を観察し、絆を深めなければなりません。
絆を深めることで、より良い支援が生かされます。時には褒めたり、時には注意したり。
特に、絆なしの注意は、本人にとって、ストレスでしかありません。
絆なしの支援は、不可能です。
絆をどう深めていくのか?が問われるのではないでしょうか。
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